水は、地球上のすべての生物にとって、生命の基盤となっているのはご存知でしょうか。
生きるためにからだに取り入れるための水、農作物を育てるための水、森林のための水、、、、など他にも数えきれないところで水は役割を持っています。
今回は「水」と「文明」について、歴史を踏まえてわかりやすく解説してまいります。
狩猟から、農耕・牧畜への変革
ずーっとずーっと昔の話。
私たち新人(ホモ・サピエンス)は約20万年前にアフリカにあらわれ、剥片石器や骨や角でつくった骨角器などをもちいて狩猟・採集して生活を営んでいました。
それから時が過ぎ…
約1万年になると氷期が終わり地球は温暖化し、自然環境が豊かになり大きく変化していきました。
そうなると新人は多様な環境に適応しなければいけません。
約9000年前、生き抜いていくために西アジアで、麦の栽培と牛・羊・ヤギなどの飼育がはじまりました。これが農耕・牧畜のはじまりです。これは歴史上とても大切な出来事で「狩猟・採集から農耕・牧畜へ」と移る重大な変革をとげたのです。
人口は飛躍的に増えていき、文明の発展の基礎が築かれていきました。
耕地に外部から人工的に水を供給する灌漑農業
初期の農耕は雨水だけ。しかも肥料をもちいない方法だったため、収穫量が乏しく、耕地も移動していました。
そんな状況を打開するためか、耕地に外部から人工的に水を供給する灌漑農業(かんがいのうぎょう)がメソポタミアではじまると、収穫量が増し食糧生産が発達してくことに…
そうして多くの人口をやしなうことが可能になり、たくさんの人間を統一的に支配するための国家という仕組みが誕生したのです。
古代四大文明と大河
紀元前3300年ごろには、
・メソポタミア文明
・エジプト文明
・インダス文明
・中国文明
といわれる、4つの文明が大河近くで誕生し発展していきました。
これが、いわゆる「古代四大文明」。
※世界四大文明・四大河文明とも呼ばれることがあります。
これらの文明が大河の近くで誕生した理由は、
- 土地を転々とする狩猟生活から、土地に根差す農耕生活に移る
- 灌漑農業を行うために河川の近くに移る
- 食料生産が発達し、人が集まり都市ができる
- 飲み水、暮らしの水が大量に確保できる
- 遠くの町に行くのも、物を運ぶにも河川が便利
- そして、多数の人間を統一的に支配する国家が形成される
となり、「水」を中心として文明は発展しています。
・メソポタミア文明は、ティグリス川とユーフラテス川の地域で誕生
・エジプト文明は、ナイル川の地域で誕生
・インダス文明は、インダス川の地域で誕生
・中国文明は、黄河・長江の地域で誕生
古代文明の人は、豊かな土地を利用して作物を作りながら暮らしていたのです。
※メソポタミアとは・・・「川のあいだの地方」という意味。ほぼ今のイラクがあるところ。
ナイル川は毎年のように氾濫し、その洪水が運ぶ栄養によって、エジプトの農業が大きな恩恵を受けていたようです。この毎年のように繰り返す氾濫の時期を、正確な暦で予測し、氾濫の危険を回避しながら、豊かな恵みの恩恵を受けることが可能に。そして、氾濫後には土地を整理しなければならなかったため、測量術も発達していきました。
古代の人の英知はすごいものですね。
人類史は歴史時代へ
そこには、宗教と交易がうまれ、支配するものとされるものとのあいだに階級差が生じることに。また、政治や商業の記録を残すために文字が発明され、人類史は歴史時代に入っていきました。
この4つの大文明が最初に起こり、以降の文明はこの流れをくむことによって文明が開化していったといわれています。
「水があるところに文明が発展する」には理由があるのですね。
※文明とは・・・都市や国家、文字などをもつ発達した高度な文化あるいは社会を包括的に指し、直接食料生産に従事しない宗教・政治・工芸の専門家集団のこと。
さいごに
私たちの住む地球は国が違くても、たがいに深い関係を持ちながら一つの世界の中で生活しています。
当たり前のような近代の暮らしも、長い人類史の中ではごく最近のできごと。
猿人から始まり、原人、旧人、新人(←これ私たち)と、系統をたどれば直立二足歩行を特長とする人類は約700万年前には誕生していたようです。
先にも述べましたように、人類が歴史を記録に残すようになった歴史時代までには非常に長い年月がかかり、なんと人類史の99パーセント以上もを占めていたというのだから、驚きです。その中の現代なんて、人類史の中のほんのひとつまみの時間なのかもしれませんね。
ちょっと話が脱線しました…
私たち人間のご先祖さまは、ずっとず~っと昔に、環境に適応するために大河のほとりに文明を作りその地域世界で独自に発展していきました。
今も昔も、水は暮らしや農業に必要不可欠。
水は文明を支えるうえで重要な役割を担っていたのです。
人の移動や物の運搬にも河川が使われていたことを考えると、その時代の人々の考え方や文化までも運んでくれる大切なルートだったのですね。
「豊富な水は文明をつくり、枯渇した水は文明を滅ぼす」
そんなことを考えながら、今日も水に感謝してありがたさを感じながらお水にたずさわる仕事をしています。
(参考資料)
木村靖二 岸本美緒 小松久男/著書 『詳説 世界史』
日本文教出版『中学社会 歴史』
(参考 Webサイト )
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』/WIKIBOOKS/アクアスフィア・水教育研究所/世界雑学ノート