近年、地球温暖化の影響を受けてか、大雨による河川の氾濫など、甚大な被害がふえているように思います。それはとてもとてもつらいことなのですが、「つらい」と言っているだけで何も対策されていないわけではありません。
大雨時の緊急速報で「ダムによる放流が始まりました・・・」のようなテロップが流れると思いますが、
これが、大雨時の対策の一つなのです。
今回は、この「大雨時になぜダムの水を放流するのか」を考えてます。
まずは、ダムについて
ダムの水を放流する理由をお伝えする前に、まずは、ダムについて説明していきましょう。
ダムの定義
日本のダムは、
【河川法と河川管理施設等構造令より】
河川の流水を貯留し、又は取水するため、河川管理者(国土交通大臣または都道府県知事)の許可受けて設置する構造物で、基礎地盤から堤の頂上までの高さが15m以上のもの
と定義されています。
高さが15m未満のものは、堰(せき)としてあつかわれるようです。
※堰とは・・・水流をせきとめたり調節したりするために、川の途中や湖・池などの水の出口に作るしきりのこと。
ちょっと難しいですが、ちゃんと許可を受けて作られた15m以上の構造物ってことですね。この15m以上というのには少し驚きました。肌感覚ではもっと高さがあると思っていたいので…
次はダムの種類。
ダムの種類
「ダム」と一口に言っても、大きく3種類にわけることができ、それぞれ役割が違います。
- 治水ダム
大雨が降ったとき、ダムに貯め込んでいる水の量を調整して、洪水による被害を最小に抑える役割を持つダム。大雨が降ると、川の上流(山)から下流(平野)に、水が一気に流れてくると洪水になってしまうので、それを防ぐ目的で作られています。 - 利水ダム
生活用水(水道水)、工業用水、農業用水などを確保するためのダム。また、水の力による水車(タービン)をまわし発電も行う。 - 多目的ダム
治水ダムと利水ダムの2つの役割を持つダム。
なるほど、、、
ダムにもそれぞれ役割があるのですね。
洪水を防ぐ目的と、生活用水などのために作られた「多目的ダム」が一番万能選手のようです。
これ以外にも、土砂災害を防止する役割を持つ「砂防ダム」というのもあるのですが、この砂防ダムは水を貯留する目的を持たないため河川法上のダムとはみなされていません。
ダムの目的
私たちが安心して生活できるように、ダムは存在します。
一番の目的は「治水」。
上でも説明したように、治水とは、大雨が降ったときなどに、川の水があふれてしまわないように、水量を調整することをいいます。
もし、
大型台風がきたら・・・
ダムがなければ、大雨で増えた水をため込むことができないだけでなく、川を流れる水の量を調整することもできなくなってしまいます。
そうなると、川に水が一気に流れ出し洪水に………
逆にもし、
雨が降らない日が続いたら・・・
川の水がどんどん減ってしまい、飲み水や生活するための水がなくなってしまいます。それに、田んぼや畑にも水がいかなくなるので、穀物や野菜も育たなくなってしまいます。もちろん、川に住む魚などの生き物たちも………
それと、
もう一つ忘れてはいけないことが。
それは、「水力発電」。
ダムに貯めた水や、川を流れる水の力を利用して電気を作ることを「水力発電」といい、水力発電は、水を高いところから低いところに向かって流して、その水の勢いで水車を回して電気を作ります。
この水力発電は、クリーンエネルギー。
理由は、電気を作るために使われた水は、川から海へそのまま流れていき、そのうち蒸発して雲や雨になります。だから、水力発電は何度でも繰り返して利用できる「再生可能なクリーンエネルギー」なのです。
石炭や石油などの限られた資源を燃やす必要もありませんし、それらを燃やすことでの二酸化炭素を発生させることもありませんしね。年間を通して水が豊かな日本では、水力発電に向いていると言えそうです。
今まで、ダムの存在が当たり前すぎて、あまり考えたことがありませんでしたが、こうやってダムについて考えてみると、ダムは私たちの暮らしのために欠かせない役割を果たしてくれているのだと、実感します。
放流する理由
ここでやっと、放流する理由についてお話するのですが、もうすでにおわかりかもしれませんね。大雨時にダムの水を放流する目的は、
- 川が氾濫しないようにするため
です。
この放流するタイミングについては、とても難しく
・大雨がくるとわかったら事前に放流するのか
・大雨でダムが満水に近づいてきたら放流するのか
・大雨がきてダムが満水になってから放流するのか
など、さまざまな意見があるようです。
2018年に申告な被害をもたらした「肱川の氾濫」のときには、国交省四国地方整備局は「2つのダムは、大雨により入ってきた水の量と同量を放流する」という対応したために発生したといわれています。
これは、放水した量が安全基準の6倍だったといわれており、想定外の雨量で氾濫してしまったようです。
このことからもわかるように、放流に関して大変難しく、意見がわかれるところです。
一年を通した、ダムの運用方法
多目的ダムの、一年を通したダムの運用方法をイラストで紹介します。
洪水を防ぐために水量を調整しているダムですが、年間を通してみるとため込む量が期間によって異なります。台風などによる洪水リスクが高まる期間のみ貯水量を減らし空き容量を多く確保しています。
このイラストを見てもわかるように、水量の調整は本当に難しそうですね。見誤ると夏場は水不足になりそうですし、、、多く貯留してしまえば洪水のリスクが高まりますし、、、。ダムを管理されている方には頭がさがります。
たとえば、ダムの最大貯水量を10とすると
ダムのおかげで私たちの生活が守られている、ということを数字で見てみましょう。
ダムの最大貯水量を「10」とすると、平常時が「6」となり、「4」の余裕が生まれます。
この「4」の余裕があれば、上流に降った雨の量が「4」以下であれば、水害は防ぎとめることができます。
このように、想定内の雨量であれば、ダムの貯水によって川の氾濫を防ぐことができるのです。
しかし、この単純な計算が示すように、「4」までは防げるところに想定外の「5」が降った場合は、話が変わってきます。
その場合は、少なくとも「1」の水量を急いで放流しなければなりません。そうしなければ、ダムが決壊してしまう可能性があるからです。
万一、ダムが決壊してしまうと、「11」の水量が下流に流れ出てしまい壊滅的な被害をもたらします。「1」のときの被害とは比べものにならないくらいの被害です。だから絶対にダムの決壊だけはさけなければなりません。
そのため、ダムが満水に近づくと、重大な判断に迫られるのです。
さいごに
ダムの役割や、大雨時に放流する理由を説明してきましたが、いかがでしたか。
この仕組みを知り理解をシェアするだけでも、大雨の時の自分たちの行動が変わってくるのだと思います。年々増えつつある水災害から身を守るためにも、私たちはいまから考えておくことはとても大切です。
大雨や台風がくるこの季節、事前放流や緊急放流が行われる可能性があります。放流がはじまるときは、すでにダムが緊迫している状態です。この記事を読んで、いまいちど「どう行動すべきなのか」を考えるきっかけにしていただければ何よりです。
(参考文献/参考資料)
国土交通省『完成ダムによる機能』
(参考Webサイト)
国土交通省 東北地用整備局/水源開発問題全国連絡会/大分河川国道事務所 ダム管理課/関西電力
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